目次
ネタバレ②:ランウェイのタブーを犯した藤戸千雪
急ごしらえながら、なんとか藤戸千雪が着用する衣装の修正が完了します。
最後に糸を切って送り出した都村育人は、バックステージに用意されたモニターから、彼女のウォーキングを見つめていました。
千雪にとっては初めてのコレクション出演。観客の声が聞こえない状態にあるだけでなく、BGMがかすかに聞こえて胸の高鳴りを感じていました。
日常生活の千雪を見れば、あからさまに緊張をしていることが分かります。
それでもショーモデルとして立派にランウェイを歩き、折り返し地点を迎えることになりました。
しかしトラブルが三度発生することになり、今度は千雪が履いているヒールが折れてしまいます。
突然の事故に対応できるわけもなく、千雪はランウェイの先端で込めてしまいますが、この窮地を救ったのは衣装を修正した育人でした。
千雪が倒れると同時に首元で結ばれていた裾部分が解けていき、観客にはまるで蝶が羽を広げたかのように見えます。
この仕掛けには柳田一も驚くばかりで、育人に事故が起きることが分かっていたのかと問い詰めます。
しかし育人は千雪がこけることを想像しておらず、遊び心で仕掛けたものだと説明。
観客の視線を釘付けにした育人の仕掛けですが、千雪は最後までモデルの仕事を全うしようとします。
もう一度ランウェイに立ち上がり、こけたことをごまかすようにして、満面の笑みを見せるのでした。
しかしランウェイを歩くモデルにとって、「こけること」「笑ってはいけない」という絶対のルールが存在します。
ただ観客たちはそのことを一切気に留めず、ただ育人の美しい演出と役割を務めた千雪に対し、喝さいを浴びせるのでした。
ネタバレ③:力を認めてもらった都村育人だが…
かくして柳田一初のコレクションは、都村育人と藤戸千雪のおかげで成功することに。
観客の拍手がそのことを証明しており、柳田もまた難しい仕事を務めた育人を、素直には褒めずとも才能を認めます。
「拍手の半分をくれてやる」という言葉は、まだ駆け出しのデザイナーである育人にとって、胸に響くものでした。
しかしプロの目線に立てば、育人はまだまだ実力不足としか言えません。
実際に衣装の修正に取りかかったものの、時間までに間に合わせることができませんでした。これはモデルたちの協力があったためで、彼女たちの力がなければ成り立ちませんでした。
そしてなによりも、技術不足である部分が露呈してしまっていること。千雪は立ち上がって腰に手を当てていましたが、そのポージングがなければ荒い縫い目が目立っているところでした。
柳田のコレクションに参加していたスタッフからの言葉は的確で、育人は自惚れるよりも実力の無さを痛感します。
しかし千雪は、育人の作業を実力不足だとは言いません。
柳田もまたその事実を突きつけておらず、彼の言葉通り、会場に響き渡っていた拍手は紛れもなく育人が受け取っていいものだと言います。
なにはともあれ、コレクションが無事に終了したことは事実。
そして同時に、都村育人はデザイナーとしての道を、藤戸千雪はパリコレモデルへの道を、それぞれ本格的に歩み始めました。