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タフじゃなきゃ生きていけない、やさしくなければ生きていく資格がない。
織田作之助は、まさに、レイモンド・チャンドラー風のハードボイルドな人生観を体現した男でした。
今回は、織田作之助のハードボイルドな生き様、そして…悲劇的な最後を解説しましょう。
【文豪ストレイドッグス】織田作之助とは?
織田作之助のプロフィール

- 身長:185センチメートル
- 体重:77キログラム
- 好きな物:カレー
- 嫌いな食べ物:肩の凝る食事会の食事
- 好きなタイプ:機転の利く女性
- 自分が思う長所と短所:長所は特になし、短所は友人に比べて才能がないところ。
織田作之助は、原作には登場しないキャラクターで、文ストの外伝とアニメに登場するキャラクターです。
外見は、赤毛で鳶色の目をした長身の男で、無精ひげを生やし、ベージュのコートに、黒のシャツという恰好をしています。
太宰や坂口安吾からは「織田作」の愛称で呼ばれています。
好物のカレーは、大変辛いものらしく、同じものを食べた太宰は「隠し味に溶岩が入っているの!?」と言っていました。
織田作之助の性格
癖のある性格をしている太宰や坂口安吾と仲良くできるほど、穏やかで思慮深い性格をしています。
世話焼き屋で、お節介な一面があるため、タバコ屋のお婆さんと2時間も話し込んでしまうこともあります(文豪ストレイドッグス外伝 BEASTより)。
あまり冗談が得意でないらしく、相手が言った冗談を、冗談と受け取ることもできないようです。
演じている声優は?
文豪ストレイドッグスで、織田作之助を演じているのは、諏訪部順一です。
バリトンの低い声質が特徴で、アニメだけでなく、ラジオやイベントのMCを務めることもあります。
また、エンターテイメント・プロジェクト「スワベジュンイチ」のリーダーを務めています。
文豪ストレイドッグス以外では、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」のスティング・オークレー役、「ジョジョの奇妙な冒険」では、第三部でテレンス・T・ダービーの役、第五部ではレオーネ・アバッキオ役を演じ、「鬼滅の刃」では響凱を演じました。
また、「文豪とアルケミスト」では芥川龍之介を演じ、「啄木鳥探偵處」では森鴎外を演じています。
芥川龍之介も森鴎外も、文ストでは織田作之助とちょっとした因縁のあるキャラクターであります。
【文豪ストレイドッグス】織田作之助とは何者?
不殺(ころさず)のマフィア

織田作之助はポートマフィアの最下級構成員で、仕事はマフィアのトラブルシューターと言えば聞こえがいいのですが、基本は何でも屋のようです。
やることは、不発弾処理から、構成員の諍いの仲介、アジトの掃除までやっています。
彼が最下級構成員に甘んじているのは、不殺を信条とするマフィアだからです。
正体は凄腕の殺し屋

織田作は、今でこそ、殺しをやめたマフィアの最下級構成員となっていますが、もともとは、凄腕の殺し屋でした。
太宰に言わせると、織田作が本気を出したら、どんなマフィアでも敵わないとのことで、少年時代から、優れた銃の腕と異能を使って、多くの人間を殺めてきました。
福沢諭吉とも出会ったことがあり、その際、拘束された状態で的確に射撃し、標的を殺すほどの手腕を見せつけて、武術の達人である福沢を驚かせていました(「織田作之助が活躍する他の作品は?」の項を参照)。
彼が殺しをやめたのは、夢をかなえるために、いつかマフィアを抜けようと思っているからです(「織田作之助の過去とは?」の項を参照)。
【文豪ストレイドッグス】織田作之助と二人の親友
太宰治とは?

太宰治は、ポートマフィアの最年少幹部で、ちゃらんぽらんな言動に合わず、冷酷な一面があり、異能を無効化させる異能「人間失格」と、優れた思考力から繰り出す策略を武器に、大勢の敵を葬ってきました。
後に、彼はマフィアをやめ、武装探偵社に入社することになります。
坂口安吾とは?

坂口安吾は、マフィア直属の情報員です。もともと会計士で、マフィアが非合法で手に入れた金を洗浄することを仕事としていました。
情報操作に長けていたため、ボスから会計だけでなく、情報を扱う仕事を任されるようになり、マフィアの裏帳簿や、癒着している関連会社のリストの管理に、取引先との日程調整などの仕事を行うようになったのです。
会計や情報を扱う仕事をしているだけあって、太宰とは裏腹に、大変几帳面で、実直な性格をしています。
【文豪ストレイドッグス】織田作之助の過去とは?
殺し屋だった過去

前述の通り、織田作は少年時代から殺し屋をしていました。当時の織田作は、感情のようなものがなく、機械のように淡々と人を殺していくだけの存在でした。
超人的な射撃能力と、異能によって標的を確実に捉える力を誇っており、この当時の織田作は、暗黒街では有名な存在であったのです。
ある古い本
織田作が14歳の頃、とある富豪の家に侵入し、いつも通り標的を抹殺しました。しかし、彼はその家にあった、古い本が気になり、そのまま持ち帰ったのです。
それ以来、無感情だった織田作の心に何かが宿ったのか、本を夢中で読むようになったのです。
殺しをやめ、小説家を志すことを決意
ある日、織田作が、いつもの日課で、仕事の後に喫茶店に立ち寄り、あの時に拾った本を呼んでいました。すると一人の男が声をかけてきました。
坊主お前、何時もその本を読んでいるな。そんなに面白いか?
文豪ストレイドッグス外伝 黒の時代
織田作が面白いと答えると、下巻の所在について聞かれました。
織田作が拾った本は、上、中、下のワンセットで、下巻だけがどうしても見当たらなかったのです。
男は、下巻はつまらないから読まない方がいいと言った後、どうしても読みたければ自分で書くといいと織田作に言いました。
そして、次の日に織田作が喫茶店に行くと、テーブルに下巻の本が置かれていました。
男の名前は夏目漱石で、本の著者でもあったのです。
この日を境に、織田作は小説家になることを決意しました。殺しをやめ、そして、人殺しの償いをするかのように、横浜にいる孤児たちを引き取って育てていったのです。
そして、何時か、海の見える家で小説を書きながら暮らすことを夢見たのです。
【文豪ストレイドッグス】織田作之助が活躍するエピソードは?
太宰治と黒の時代とは?

「文豪ストレイドッグス 太宰治と黒の時代」とは文ストの外伝にあたる小説で、織田作、太宰治、坂口安吾の三人を主役とした物語です。
タイトルの「黒の時代」は、原作者の朝霧カフカによると、ピカソの青の時代からとったものです。
物語は、織田作のモノローグ(自分語り)で進行し、レイモンド・チャンドラー形式のハードボイルドタッチな作風となっています。
内容も、コミカルな本編とは違い、人が死ぬ描写も多く、かなりハードな展開となっています。
織田作之助が活躍する他の作品は?

黒の時代以外で、織田作が登場するのは、「探偵社設立秘話」と「BEAST」です。
「探偵社設立秘話」では、少年時代の織田作が語られています。織田作の活躍はわずかですが、若いころの福沢諭吉と戦うというかなり貴重な場面があります。
「BEAST」は、本編の主人公である中島敦がマフィア、芥川が探偵社に入社しているというパラレルワールドを描いた作品です。
この作品では、織田作はマフィアをすでに辞めて、小説を書きながら探偵社に勤めており、一方、太宰はマフィアのボスとなっています。
織田作のポジションは、芥川の先輩であり、彼に戦いを教えた師となっています。
黒の時代とは違う結末が語られており、織田作達が、本編とは別の方向性をたどっていたらどうなるのかが気になる人は、必見の書です。
【文豪ストレイドッグス】織田作之助の異能力とは?
異能「天衣無縫」とは?
織田作の異能、「天衣無縫」とは、5秒以上か、6秒以上の未来を予知する能力で、この能力を使って、標的の行動を予測して正確に射止めることができ、また、相手の攻撃を見抜いて、かわすこともできます。
欠点は、罠にはまってしまった状態で、予知しても回避することができないことです。
- 類似能力者
- ジョジョの奇妙な冒険・第5部
ディアボロのキングクリムゾン(正確には、キングクリムゾンの能力の一部エピタフ)。
- ワールドトリガー
迅悠一
- 僕のヒーローアカデミア
サー・ナイトアイ
(HUNTER×HUNTERのネオンやジョジョ第三部のボインゴの能力は「予言」に近い)
どれほどの戦闘能力なのか?
織田作は、優れた射撃能力と、天衣無縫の力で、敵を確実に狙い撃ち、そして、必要最小限の動きで敵の攻撃をかわすことができます。
また、異能を使わなくても、敵の殺気を察知する力に長けているうえに、あらゆる角度から銃を撃つことができるので、アクロバティックなアクションもできます。
アニメでは、映画「リベリオン」に登場するガン=カタを彷彿する戦い方をしており、特に、同じ能力者であるミミックの首領アンドレ・ジイドと戦いでは、お互い攻撃を予測しあい、無数の時間軸を読みあうような奇妙な戦いを繰り広げます。
【文豪ストレイドッグス】織田作之助の最後(ネタバレあり)
行方不明になった坂口安吾

織田作はある日、ポートマフィアのボスである森鴎外から呼び出しを受けました。
鴎外は、坂口安吾が行方をくらましたので、仲のいい織田作に探してもらおうと思ったのです。
安吾は、ホテル住まいをしていたので、織田作は安吾が停泊しているホテルに向かい、手がかりを探していると、小さな白い金庫を見つけました。
その直後、織田作は何者かに狙撃されます。「天衣無縫」の異能で、危険を察知した織田作は狙撃をかわすことに成功します。
安吾の真実

織田作は太宰と合流すると、金庫の中を調べることにしました。
金庫の中に入っていたのは、灰色の古式拳銃でした。近年、マフィアを襲撃している者が使っている拳銃と同タイプの拳銃です。
彼らの正体は、ミミックと呼ばれる欧州の犯罪者集団で、彼らは元々傭兵部隊でした。織田作を狙撃したのもミミックの仕業のようです。
安吾は何か隠し事をしている。太宰からそう忠告を受けた織田作は、急いで安吾を探し続けました。
やがて、ミミックの拠点にたどり着いた織田作は、そこで囚われている安吾を助けましたが、自分の近くに転がってきた手毬をうっかり触ってしまい、毬の表面に付着した劇薬によって気絶してしまいます。
薄れゆく意識の中で織田作が見たのは、黒装束の特殊部隊を従えた安吾でした。
安吾の正体は、異能特務課から派遣された潜入捜査官だったのです。
ミミックとの戦い

安吾は、異能特務課、マフィア、ミミックの三重スパイでもあったのです。
異能特務課は、マフィアだけでなく、欧州から来た犯罪者集団ミミックに対しても警戒していました。
そこで、ミミックにマフィアの情報を流すことによって、両組織を戦わせて、共倒れを目論んだのです。
一方、織田作は、孤児たちの家に行こうとすると、途中で孤児たちを乗せた車に遭遇しました。
孤児たちを乗せた車は、ミミックによって織田作の目の前で爆破され、織田作は絶望的な叫び声をあげました。
子供たちを目の前で殺された織田作は、死を覚悟して、単身でミミックの砦に向かい、彼らを殲滅してゆきました。
そして、織田作は最後に、ミミックの首領、アンドレ・ジイドと対決しました。
ジイドは織田作と同じ予知の力を持っていました。戦いの最中、双方共、自分が殺される未来を見てはかわし、見てはかわしを繰り返していました。
現実では数秒に満たない時間の中、双方の意識は、時間を飛び越えて、ぶつかり合い、そして、互いの銃口が、互いの心臓を貫いたのです。
太宰に言った、織田作之助の最後の名言

傍から見ると、二人の死因は、ジイドと織田作の共倒れに見えるでしょうが、双方は同じ異能を持った者同士のぶつかり合いによって生じる、特異点とも呼ぶべき世界で、戦いを繰り広げていたのです。
一方、太宰は森鴎外の真意に気づき、織田作の元に向かいました。
鴎外は、安吾が潜入捜査官であることに最初から気づいていたのです。
そして、安吾を使って、ミミックをわざと招き入れ、ミミックの存在を知った異能特務課が、マフィアとミミックを潰しあいさせようと目論むことまで想定すると、ミミックと戦うことを条件に、異能を使って合法的利益を得るための「異能開業許可証」を得ようと、特務課と取引したのです。
そして、マフィアから無駄な犠牲を出さないために、織田作をミミックにぶつけたのです。彼が匿っている孤児たちの存在をミミックに流してまで。
織田作は、死の床につく寸前、駆け付けた太宰に言葉をかけました。
人を救う側になれ どちらも同じなら、佳い人間になれ。弱者を救い、孤児を守れ。正義も悪も、お前には大差がないだろうが……そのほうが、幾分か素敵だ。
文豪ストレイドッグス外伝 黒の時代
そう言って、織田作は事切れたのです。
その後、太宰は織田作の言葉通り、人を救える仕事を求め、特務課の長官である種田山頭火に、武装探偵社を紹介してもらいました。
太宰が身にまとっていたのは、マフィア時代に着ていた黒のコートではなく、織田作と同じベージュのコートでした。
【文豪ストレイドッグス】実際の文豪、織田作之助とは?
織田作之助とは?

織田作之助は、昭和初期に活躍した文豪で、無頼派と呼ばれる作家の一人です。
無頼派とは、近代文学で正統派と呼ばれた漢文学や和歌に対して反発し、滑稽味のある庶民を主人公とした江戸時代の戯作の精神を重んじている作家たちのことです。
もともと織田作之助は、劇作家を志しており、小説には興味がなかったのですが、スタンダールを読んで小説家を志したとのことです。
出身地である大阪や京都を舞台にした作品が多く、代表作である「夫婦善哉」は、大阪を舞台にした作品で、「天衣無縫」は京都を舞台にした作品です。
大変な愛妻家で知られており、妻である一枝の写真をいつも持ち歩いていました。
漫画家の山川直人は「コーヒーをもう一杯」というオムニバス漫画で、織田作之助と一枝のエピソードを描いています(第3巻収録『一枝と作之助』より)
天衣無縫とは?
織田作之助の天衣無縫。買ったのは随分前だけど、やっとページを捲って1ヶ月掛かって読み終わった。関西弁が入ると少し読みにくい…。でも短編集だからたくさん読めて楽しかった。表紙は「文豪ストレイドッグス」の織田作之助。 #読書 pic.twitter.com/xIiYL6fxPA
— 芹(・θ・) (@666_seRi) January 25, 2022
天衣無縫とは、天真爛漫なこと、自然体であることを意味している言葉です。
織田作之助の著作である天衣無縫は、とぼけた性格をした男である軽部清正の行動を、妻である政子の視点で語られる物語です。
軽部清正は、お人好しで素直な性格をしていますが、夫としてはイマイチ頼りなく、要領も悪いので、婚前前のデートすらスムーズに往かない人でした。
お金にもルーズで、それほどお金持ちでもないのに、困っている人がいるとすぐにお金を貸してしまうのです。
政子はそんな夫を、時に批判し、時に叱りつけつつも、どこか暖かく見守っているようでもあります。
文ストの異能「天衣無縫」は予知の能力であり、作品からかなりかけはなれた能力と言えます。
もっとも、天衣には、天人や天女の衣という意味があり、天衣無縫が予知の力となっているのは、天からすべてを見通すというイメージからきていると思われます。
文ストの織田作之助と共通点、死因など
https://twitter.com/nogizaka55/status/936084231045840896
文スト同様、同じ無頼派である太宰治と坂口安吾は親友であり、織田作之助は二人から「織田作」の愛称で呼ばれていました。
また、文ストで三人が飲みに行っていたバー「ルパン」は、実在した飲み屋がモデルになっており、三人はそこで飲み交わしていたとのことです。
この当時の様子は、黒の時代の冒頭でも引用されている織田作之助の著書、「可能性の文学」で描写されています。
そして、文ストの織田作同様、カレー好きでも有名で、彼が好んでいたのは、大阪の自由軒という店にある名物カレーのことです。
文ストの原作者である、朝霧カフカ氏もこの店のカレーを食べてみたところ、大変な辛さで驚いたそうです。
死因は結核のようで、織田作之助は幼少時代から体が弱く、ちょくちょくヒロポンをうっていました。
ヒロポンは覚せい剤ですが、当時、薬局で売られており、坂口安吾など、多くの文豪がヒロポンをうっていました。
(織田作之助が好んだカレーを売っている「大阪・難波 自由軒」の公式サイトはこちら)
【文豪ストレイドッグス】織田作之助のまとめ
織田作は、原作では未登場のキャラクターです。
もっとも、時折、太宰が織田作のことを思い出しているような場面があり、直接的ではないにせよ、織田作の存在をちらつかせています。
織田作のファンは、原作を拝見する際チェックしてみてください。