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文豪ストレイドッグスの夢野久作は、小さな帽子をチョコンとのせた可愛らしい子供です。
お行儀もよく、電車で出会ったナオミと春野綺羅子すぐに仲良くなりました。
しかし、その正体は、マフィアの中でも最も忌まわしい異能力者だったのです。
それでは、夢野久作の正体を解説していきましょう。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作とは?
夢野久作のプロフィール

- 年齢:13歳
- 誕生日:1月4日
- 身長::146cm
- 体重:38㎏
- 血液型:AB型
- 好きなもの:自分、混沌、黒砂糖
- 嫌いなもの:自分、平和、社会、病院
夢野久作は小柄な体格の子供で、髪の色は白と黒のツートンカラーとなっており、黒い小さな帽子を頭に乗せています。
可愛らしい見た目とは裏腹に、なぜか傷んだ気味の悪い人形を持っています。
目は一重で、コンタクトを入れているのかは定かではありませんが、右目に星のマーク、左目には丸が描かれています。
そして…なぜか異様なほど、どす黒い目をしています。
夢野久作の性格

とても無邪気で素直な子供であり、見た目も可愛らしいということもあって、逃亡中のナオミや春野綺羅子と、すぐに仲良くなりました。
礼儀正しい一面もあり、電車内で綺羅子とぶつかった際は丁寧に謝っていました。
演じている声優は?
『BanG Dream! Special☆LIVE
— 工藤晴香 12/29ソロLIVEやるよ! (@kudoharuka910) November 12, 2022
Girls Band Party! 2020→2022』
ありがとうございました〜
ベルーナドーム、最高の景色だったよ!運転免許欲しいんで、私も内輪差、勉強します。
これからも、みんなで夢を撃ち抜いて行こうね☆#GBP2022 #バンドリ #ガルパ pic.twitter.com/dNGv7e8kFt
夢野久作の声を担当しているのは、女性声優の工藤晴香です。
工藤晴香は大阪府出身で、元々はファッション雑誌でモデルとして活動していました。
その後、2005年にテレビアニメ『ハチミツとクローバー』の花本はぐみ役で声優デビューしました。
やがて、HUNTER×HUNTERのポンズ役、DEATH NOTEでは夜神粧裕役を担当して、有名になったのです。
現在では「Roselia」というバンドを結成し、アーティストとしても活躍しています。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作の性別
見た目はかわいい男の子
夢野久作の見た目は、半ズボンを履いた少年のようですが、実は、本作で久作の性別に関しては明らかになっていません(本記事では便宜上「彼」と表記します)。
久作の一人称は「僕」で、雰囲気も仕草も少年そのものですが、アニメ版の久作の声を聞いてみると、時折女の子のような感じの喋り方をするときがあります。
また、13歳の男児の平均は156cmなのに対し、夢野久作の身長は146cmと、かなり低い方になります。
14歳の少女である泉鏡花より小さいので、男の子だとしたらかなり小柄な方に該当します。
男の子?それとも女の子?
文ストデザイン犬神博士の表紙の夢Qちんまさかの女の子で草生えた少女地獄から発想得てんのかな?わかんねぇけど#文豪ストレイドッグス #夢野久作 pic.twitter.com/MOfqUnGHmh
— かるしうむ (@yumenoq1114) July 13, 2021
元になった文豪である夢野久作は男性です。ただ、文豪ストレイドッグスに登場するキャラクターの中には、泉鏡花や尾崎紅葉など、男性作家が女性キャラになっている場合もあるので、男性作家だからと言って女性キャラにしないわけではないようです。
また、夢野久作が書いた「犬神博士」という小説では、女装している少年が主人公となっているので、文ストの夢野久作のキャラクター像は、これを元にして創られた可能性があります。
一方、文豪ストレイドッグスの原作を担当している朝霧カフカ氏は、男子ではない可能性があるという主旨のツイートをしています。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作の本性
「Q」呼ばれた子供
夢野久作は、一見すると、無邪気で可愛らしい子供のように思えますがですが、その正体はマフィアの構成員であり、周囲からは「Q」という異名で呼ばれています。
年端もいかない子供なのに、マフィアとなっているのは、幼少の頃に異能力に目覚めていたため、その事を知った森鴎外によって引き取られて、そのままマフィアの構成員となったのです。
なぜ閉じ込められていたのか?
夢野久作が、本名ではなく「Q」という異名で呼ばれていることからも分かるように、彼はマフィアの中でさえ恐れられている存在です。
実は、見た目とは裏腹に久作の本性は残忍そのもので、敵味方の区別なく襲い掛かる狂気の異能者だったのです。
仲間のマフィアですら容赦がなく、久作一人のために何人もの犠牲者が出たために、座敷牢に閉じ込められたのです。
中原中也ですら、「その餓鬼を見てると、死んだ部下たちの死体袋が目の前をちらつく」と言っていることから、いかにマフィア達が久作を忌み嫌っているかがよくわかります。
混沌をもたらす恐ろしき人形遣い
文ストの夢Qちゃんは『犬神博士』のカバー絵が初見だったんだが…まさかこんなにヤンデレ可愛いとは✨✨✨しかし実在の夢野久作さんはよもや自分が萌えショタとして昇華されるとは思ってもいないんだろうな~…(爆)#夢野久作 #ヤンデレ #可愛い #ショタ #今この子に夢中 pic.twitter.com/vA0PfeaIDZ
— A-suka(エースケ) (@trunksBluepurpl) November 10, 2022
夢野久作が多くの人から忌み嫌われているのは、単に残忍な性格だからではなく、異能にも理由があります。
久作の異能は、人形を媒介にして人の心を呪って、狂気の世界に誘うという、精神操作系の異能力者であったのです。
精神操作系の異能力者は、異能の中でも最も忌み嫌われる能力者であり、犠牲になった人たちは、久作によって心を壊されてしまい、狂気に駆られて死んでいったのです。
無邪気な彼の本性は、人間を玩具のようにもてあそぶ、忌まわしい人形遣いだったのです。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作の登場回
初登場

探偵社、組合(ギルド)、マフィアの三社の間で戦争が始まると、事務員たちは安全のために都市郊外へと避難していました。
ナオミと春野綺羅子も、ギルドの追手から逃れるために列車に乗り込みました。
すると綺羅子は、人形を抱きかかえた少年とぶつかってしまいます。この少年こそ、夢野久作でした。
中島敦を狂気に誘う

列車が近くの駅に停車すると、ナオミと綺羅子は、駅で待っていた中島敦と合流します。
敦は、二人の護衛任務に就こうとすると、列車から出てきた久作とぶつかってしまいます。
久作は、わざとぶつかって袖の下に仕込んでいた鉄線で、自分に傷をつけると、己の異能を発動させて、敦に呪いをかけました。
混乱した敦は、異能を発動してナオミや綺羅子を攻撃してしまい、自己嫌悪に陥ってしまいます。
ギルドに捕らえれる
街の中を歩いて、久々の自由を満喫している久作ですが、ギルドの一員であるラヴクラフトと遭遇すると、彼に呪いを仕掛けようとしました。
しかし、ラヴクラフトになぜか呪いは効かず、逆に捕らえられてしまいます。
捕らえられた久作は、ギルドの「横浜焼却作戦」に利用され、能力を広範囲に発揮させるべく、地下室で拷問を受ける羽目になってしまいます。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作の関係者
太宰治

夢野久作は太宰治が15歳の時に出会っています。この顛末は、小説版の「文豪ストレイドッグス 太宰、中也、十五歳」に載っています。
当時、久作はまだ五歳くらいの幼児で、マフィアの首領になったばかりの森鴎外によって、太宰と共に育てられたのです。
当初、太宰は小さな弟分ができた程度にしか思っていなかったようですが、久作が本性を表した際、能力無効化の異能「人間失格」を使って、彼を座敷牢に閉じ込めたのです。
精神という、防ぎようのないものに干渉する久作の異能に、唯一対抗できるのは、太宰の異能無効化のみなのです。
森鴎外

森鴎外は、幼少時の夢野久作を引き取ってくれた人物です。首領になったばかりの頃、鴎外は、知り合いの病院から、異能を使う子供の事を聞いて、彼を保護したのです。
当初、久作がいかなる異能を使うのかは、鴎外でもわからなかったようですが、危うい能力であるという危惧を抱いていたため、人間失格の力を持つ太宰に正体を見極めさせていました。
久作は、自分を引き取ってくれた人物ということもあるのか、森鴎外の言うことだけは聞くようで、座敷牢から出された際、無関係な人を傷つけるなという言いつけも守っていました。
ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

街に出た久作は、異能を使って人を玩具代わりにして遊ぼうとしましたが、前述したように、鴎外から無関係な人を殺さないように言われていたため、かわりにギルドの一員であるラヴクラフトを餌食にしようとしました。
ところがラヴクラフトには、呪いが効かないばかりか、海洋生物のような異形の怪物になって、逆に久作を恐怖に陥れてしまいます。
実は、ラヴクラフトは異能力者とは違う存在らしく、まともな精神構造を持った人間かどうかもあやしいキャラクターであったために、久作の精神操作の異能が効かなかったようです。
ちなみに、ラヴクラフトとは、クトゥルー神話の生みの親であり、米国を代表する怪奇小説家でもあります。
夢野久作もまた、日本を代表する怪奇作家であり、日米双方の怪奇作家が邂逅した興味深い場面でもあります。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作の名言、名セリフ
「太宰さんを壊す楽しみが残っているもの☆」

第七巻収録二十五話より
夢野久作は、中島敦に呪いを仕掛けて、彼にナオミと綺羅子を襲わせました。大急ぎで駆けつけてきた太宰が、久作の人形に人間失格を発動したおかげで、この場を治めることができました。
久作は、自己嫌悪に陥っている敦を眺めながら「太宰さんの新しいお友達はずいぶん壊れやすいんだね」と言うと、続けて「けどいいんだ、太宰さんを壊す楽しみが残っているもの☆」と言ったのです。
久作は、無邪気な笑みを浮かべながら、自分を閉じ込めた太宰を苦しめて壊すと宣言しました。自分を座敷牢に閉じ込めた太宰に対して、凄まじい憎悪を抱いてることを感じさせる一言です。
「やっぱ外っていいなあ!みんな楽しそう……ふふ、誰で遊ぼうかな」
第七巻収録二十七話より
久しぶりの外出で、浮かれている夢野久作ですが「誰で遊ぼうかな」の一言にゾッとさせるものがあります。
カマキリや猫が、獲物をもてあそんで楽しむように、久作は、人間を玩具程度しか見ていないので、赤の他人でも平気で苦しめて遊び道具にしてしまうことでしょう。
森鴎外がちゃんと久作に、他人を傷つけないようにと言い聞かせていなかったら、何をしていたかわかりません。
しかし、この後久作は、ラヴクラフトという、狂気を超えた異形の存在にやられてしまいます。
「こんな力欲しいと思ったことなんて一度もない」
第七巻収録二十八話より
久作はギルドに捕まり、彼はギルドの「横浜焼却作戦」に利用されてしまいます。
久作は、ジョン・スタインベックの異能「怒りの葡萄(葡萄のつるを媒介に植物を操る異能)」によって、樹木と神経をつなげられてしまいます、
さらに、スタインベックは、樹木の根を横浜中にある樹とつなげてしまい、より多くの人間が、久作の神経と一体となった木を踏みつけるようにして、久作に呪われるようにしたのです。
苦痛に悶える久作は、当初はスタインベックを罵倒していたものの、とうとう根負けしたのか、涙を流しながら「こんな力欲しいと思ったことなんて一度もない、なのにどうしていつも、こんなひどいことばかり僕に起こるの?」と言ったのです。
今までの振る舞いのため、泣き落としに見えそうですが、前述した通り、精神操作系の異能は、周囲からもっとも忌み嫌われる異能であるため、久作の居場所はマフィアしかなかったのです。
ところが、マフィアでさえ、大半の人間が久作を嫌っているために、彼は孤独に追いやられ、とうとう世の中を恨み続けるようになってしまったのかもしれません。
そのことを悟ったのか、久作を拷問しているスタインベックも若干同情的になっています。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作の異能は?
異能「ドグラ・マグラ」とは?
文ストのQの人形役は宮野真守!!
— 三科 (@wkarnnn) February 19, 2017
宮野「Qだよ〜〜」
客「(何言ってんだこいつ)」
宮野「マジだよ??????」
マジです pic.twitter.com/5BkFRDNULv
ドグラ・マグラとは、夢野久作を傷つけた相手を呪う能力です。
呪いの対象者には手形の痣が浮き上がり、呪いが発動すると、人形はケタケタと不気味な笑い声をあげて、生きているかのように動き出します。
そして、久作が持っている人形を破壊することで呪いが発動されるのです。
ちなみに、人形の声を演じているのは、太宰役の宮野真守です。
呪いを受けた相手は、幻覚を見るようになり、自分の嫌な過去が掘り起こされ、周囲を無差別に襲い掛かるようになります。
異能を食らわせる対象が、自分を傷つけた者であるため、久作は服やバックの中に棘付きの鉄線を忍ばせており、これを腕に巻き付けて、わざと相手にぶつかることで、自分自身を傷つけさせています。
そのため、久作の腕は傷だらけになっており、人形も呪いを発動させる際に破壊するので、かなりボロボロになっています。
片足もとれて一本足になっているため、どことなく東北地方に伝わる霊媒師「イタコ」が使っている、おしら様を彷彿させるようなデザインになっています。
呼吸する厄災!異能の中でも最も忌まわしい力
太宰が夢野久作のことを、「呼吸する厄災」とまで言い切っている通り、呪う対象者に再現はなく、本人を傷つけた者であれば、何人でも呪うことができます。
また、回想シーンを見てみると、呪われた人の中には首を吊っている者もおり、周囲を無差別に襲うだけでなく、自殺にまで追い込まれることもあるようです。
そのため、久作一人を座敷牢に入れるために、大勢の人間が犠牲になったのです。
また、ギルドはこの力を応用して、横浜中を混乱に貶めようとしており、久作の異能がいかに恐ろしいかを物語っています。
- 類似能力者
- 幻覚を見せる
NARUTO -ナルト-
うちわイタチ
武装錬金
蝶野爆爵のアリス・イン・ワンダーランド
GetBackers-奪還屋-
美堂蛮の邪眼
- 自分を傷つけた者を呪う
ジョジョの奇妙な冒険第3部
エボニー・デビル(人形を使う点も類似している)
- 精神を混乱させて仲間割れを起こす
ジョジョの奇妙な冒険ストーンオーシャン
サバイバー
ちなみに、戦国時代に実在したとも言われている怪僧、果心居士(かしんこじ)も、文ストの久作と同じように、他者に幻覚を見せる力があったと言われ、冷酷で知られる松永弾正に幻術を使って震え上がらせたという伝承があります。
【文豪ストレイドッグス】実際の文豪、夢野久作とは?
夢野久作とは?
夢野久作は、大正時代の作家で、本名は杉山直樹と言います。出身は福岡で、父親は正解の黒幕と呼ばれ、政治団体である玄洋社に所属していた杉山茂丸です。
軍人、禅僧、農家、九州日報の新聞記者などの職を転々とした後、九州日報にㇽポタージュや童話などを執筆して作家となります。
怪奇小説から探偵小説などを執筆し、主人公の視点で語られる独白形式で書かれている作品が多く、文体にカタカナ語が多いのが特徴です。
夢野久作という独特のペンネームは、昔の福岡地方の方言で「夢想家、夢ばかり見る人」のことを意味する「夢の久作」に由来しています。
さらに、父親の茂丸が、息子の書いた小説を読んだ際「夢の久作の書いたごたる小説じゃねー」と評したことから、ペンネームをそのまま夢野久作としました。
ドグラ・マグラとは?
ドグラ・マグラとは、日本探偵小説三大奇書の一つであり、他の二つは、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」と中井英夫の「虚無への供物」です。
ちなみに、小栗虫太郎は文豪ストに登場し、アニメではシーズン4より活躍します。重要なキャラクターなので、ファンの方はチェックしてください。
ドグラ・マグラとは、作中だと切支丹の呪術、さらに「戸惑う、面食らう」や「堂廻り、目くらみ」という意味の言葉と言われていますが、夢野久作の著作の一つである「犬神博士」では幻術使いのことを、ドグラマグラと呼んでいるため、はっきりとしたことはわかっていません。
物語も記憶喪失となった一人の男の過去を巡るお話であり、詳細を説明するにはかなり難しい小説です。
映像化不可能と言われた作品ですが、1988年に実写映画化され、原作と比べるとかなり分かりやすい内容となっているので、こちらの方も拝見することをお勧めします。
狂気的な内容でもあるため「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」とまで言われており、作家の横溝正史は本書を読んで錯乱したとまで言われています。
また、漫画家にも本作の影響を受けている人が多く見られ、「DEATH NOTE」小畑健は「魔神冒険譚ランプ・ランプ」という漫画で、敵キャラクターの名前をドグラマグラと名付け、椎名高志も「GS美神 極楽大作戦」で、土偶羅魔具羅(どぐらまぐら)というキャラクターを登場させています。
また、女性漫画家の安野モヨコは、自身のペンネームを、本作の登場人物である「呉モヨ子」からつけたとのことです。
「狂」威の小説ドグラ・マグラ
胎児よ 胎児よ 何故踊る 母親の心がわかって おそろしいのか
「ドグラ・マグラ」巻頭歌より
ドグラ・マグラはこの奇妙な一文から始まります。
一人の男が九州大学の精神病院の一室で目を覚ましますが、彼は記憶を失っていました。隣室には、自分の部屋に向かって叫び続ける少女の声が聞こえてきました。
すると、男の部屋に若林と名乗る長身の男が現れました。若林は九州大学の教授をしており、男の記憶を蘇らせる手伝いをしようとしていたのです。
男は体を洗い学生服に着替えると、自分がはじめて若い青年であることを認識します。若林教授は、男を隣室に案内すると、そこには先ほど自分の部屋に向かって叫びつつけていた少女が眠っていました。
若林は、その少女は男の婚約者と言いましたが、彼まるで記憶にありません。次に、若林教授は、彼を精神や脳に関する資料を集めた部屋に案内しました。
資料の一つに「ドグラ・マグラ」という論文があり、本作の巻頭歌と同じ文章が書かれていました。
さらに、若林教授は、自身の前任者である正木教授の資料を見せました。その資料には呉一郎という青年について書かれていました。
呉一郎は、従妹にして許嫁の呉モヨ子を殺したという事件を起こしており、本作は、この記憶喪失の主人公が果たして呉一郎なのかどうかを探る話となっています。
記憶を探る手がかりとして、主人公は、正木教授の集めた資料を読み漁っていくのですが、教授の残した資料には、脳髄や胎児の記憶や、前世の記憶について書かれたことばかりで、なかなか真相にたどり着くことができず、物語がループしているような場面もあり、結局、物語は混沌のまま終わってしまいます。
ドグラ・マグラの中で、脳というのは体の細胞に込められた記憶を集積して、映写機のように映し出すものという解説があり、脳の見せているものが現実とは限らない、もしくは、細胞に込められた何か、あるいは祖先、もしくは前世の記憶を見せていると解説しています。
文ストで、ドグラ・マグラが精神操作の異能となったのは、本作の人を幻惑するような作風と、主人公の見えているものが現実なのか、それとも脳が見せている幻なのか、わからなくなってしまうような物語展開が由来となっていると思われます。
本作を現代の作品に例えると、フィリップ・K・ディックやマトリックス、攻殻機動隊などのように、現実とは何か、脳とは何かを問いかけるようなサイバーパンク的な作品ともいえます。
つまり、ドグラ・マグラとは大正時代のマトリックスというべき作品なのです。
また、ドグラ・マグラを理解するために、以下の作品を読むことをお薦めします。
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
前作から14年後を舞台にしており、主人公のシンジが突如目が覚める場面や、周囲の人から、自身のことや、母親のこと、自分が身に覚えのない事件を引き起こしたと聞かされる場面は、どことなく、ドグラ・マグラで主人公が若林教授や正木教授から、呉一郎に関することを聞かされている場面を彷彿させます。
また、テレビ放映版のエヴァンゲリオンも胎児、母体、精神、記憶などテーマにしている作品であるため、ドグラ・マグラと類似している箇所の多い作品です。
監督の庵野秀明は、エヴァとドグラ・マグラの関連性に関して語ってはいませんが、監督の奥さんは安野モヨ子であり、前述したように彼女のペンネームはドグラ・マグラの登場人物が元になっています。
- SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)
主人公である響裕太が記憶を失っていると言う点や、彼がコンピューターに映っているグリッドマンと一体となっているという設定は、ドグラ・マグラで主人公と資料に書かれている呉一郎が同一人物(かもしれない)という設定と類似しています。
また、見えているものが、現実なのかどうなのかわからないという不可思議な世界観は、ドグラ・マグラに通じるものがあります。
- 火の鳥(復活編)
舞台は25世紀の未来。外科手術で脳の半分を機械に代用することで生きながらえた主人公の青年は、生物が無機物に見えて、ロボットが人間に見えるという現象に悩まされます。
やがて、主人公は、自分を殺しかけたのは何者で、なぜ殺そうとしたのかを突き止めようとします。
脳が見せるものは果たして真実なのか、記憶とは細胞にも宿っているのではないのかという点が、ドグラ・マグラと類似しています。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作のまとめ
いかがでしょうか、文ストの夢野久作も、元になったドグラ・マグラも、人を幻惑する不思議な魅力を持っています。
文ストをご覧になられた方は、ぜひ、小説のドグラ・マグラも一読してください。読むと気が狂うと言われてますが、安心してください、本作を読んだ筆者は正常です。
……本当に正常です。