目次
呼吸する厄災!異能の中でも最も忌まわしい力
太宰が夢野久作のことを、「呼吸する厄災」とまで言い切っている通り、呪う対象者に再現はなく、本人を傷つけた者であれば、何人でも呪うことができます。
また、回想シーンを見てみると、呪われた人の中には首を吊っている者もおり、周囲を無差別に襲うだけでなく、自殺にまで追い込まれることもあるようです。
そのため、久作一人を座敷牢に入れるために、大勢の人間が犠牲になったのです。
また、ギルドはこの力を応用して、横浜中を混乱に貶めようとしており、久作の異能がいかに恐ろしいかを物語っています。
- 類似能力者
- 幻覚を見せる
NARUTO -ナルト-
うちわイタチ
武装錬金
蝶野爆爵のアリス・イン・ワンダーランド
GetBackers-奪還屋-
美堂蛮の邪眼
- 自分を傷つけた者を呪う
ジョジョの奇妙な冒険第3部
エボニー・デビル(人形を使う点も類似している)
- 精神を混乱させて仲間割れを起こす
ジョジョの奇妙な冒険ストーンオーシャン
サバイバー
ちなみに、戦国時代に実在したとも言われている怪僧、果心居士(かしんこじ)も、文ストの久作と同じように、他者に幻覚を見せる力があったと言われ、冷酷で知られる松永弾正に幻術を使って震え上がらせたという伝承があります。
【文豪ストレイドッグス】実際の文豪、夢野久作とは?
夢野久作とは?
夢野久作は、大正時代の作家で、本名は杉山直樹と言います。出身は福岡で、父親は正解の黒幕と呼ばれ、政治団体である玄洋社に所属していた杉山茂丸です。
軍人、禅僧、農家、九州日報の新聞記者などの職を転々とした後、九州日報にㇽポタージュや童話などを執筆して作家となります。
怪奇小説から探偵小説などを執筆し、主人公の視点で語られる独白形式で書かれている作品が多く、文体にカタカナ語が多いのが特徴です。
夢野久作という独特のペンネームは、昔の福岡地方の方言で「夢想家、夢ばかり見る人」のことを意味する「夢の久作」に由来しています。
さらに、父親の茂丸が、息子の書いた小説を読んだ際「夢の久作の書いたごたる小説じゃねー」と評したことから、ペンネームをそのまま夢野久作としました。
ドグラ・マグラとは?
ドグラ・マグラとは、日本探偵小説三大奇書の一つであり、他の二つは、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」と中井英夫の「虚無への供物」です。
ちなみに、小栗虫太郎は文豪ストに登場し、アニメではシーズン4より活躍します。重要なキャラクターなので、ファンの方はチェックしてください。
ドグラ・マグラとは、作中だと切支丹の呪術、さらに「戸惑う、面食らう」や「堂廻り、目くらみ」という意味の言葉と言われていますが、夢野久作の著作の一つである「犬神博士」では幻術使いのことを、ドグラマグラと呼んでいるため、はっきりとしたことはわかっていません。
物語も記憶喪失となった一人の男の過去を巡るお話であり、詳細を説明するにはかなり難しい小説です。
映像化不可能と言われた作品ですが、1988年に実写映画化され、原作と比べるとかなり分かりやすい内容となっているので、こちらの方も拝見することをお勧めします。
狂気的な内容でもあるため「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」とまで言われており、作家の横溝正史は本書を読んで錯乱したとまで言われています。
また、漫画家にも本作の影響を受けている人が多く見られ、「DEATH NOTE」小畑健は「魔神冒険譚ランプ・ランプ」という漫画で、敵キャラクターの名前をドグラマグラと名付け、椎名高志も「GS美神 極楽大作戦」で、土偶羅魔具羅(どぐらまぐら)というキャラクターを登場させています。
また、女性漫画家の安野モヨコは、自身のペンネームを、本作の登場人物である「呉モヨ子」からつけたとのことです。
「狂」威の小説ドグラ・マグラ
胎児よ 胎児よ 何故踊る 母親の心がわかって おそろしいのか
「ドグラ・マグラ」巻頭歌より
ドグラ・マグラはこの奇妙な一文から始まります。
一人の男が九州大学の精神病院の一室で目を覚ましますが、彼は記憶を失っていました。隣室には、自分の部屋に向かって叫び続ける少女の声が聞こえてきました。
すると、男の部屋に若林と名乗る長身の男が現れました。若林は九州大学の教授をしており、男の記憶を蘇らせる手伝いをしようとしていたのです。
男は体を洗い学生服に着替えると、自分がはじめて若い青年であることを認識します。若林教授は、男を隣室に案内すると、そこには先ほど自分の部屋に向かって叫びつつけていた少女が眠っていました。
若林は、その少女は男の婚約者と言いましたが、彼まるで記憶にありません。次に、若林教授は、彼を精神や脳に関する資料を集めた部屋に案内しました。
資料の一つに「ドグラ・マグラ」という論文があり、本作の巻頭歌と同じ文章が書かれていました。
さらに、若林教授は、自身の前任者である正木教授の資料を見せました。その資料には呉一郎という青年について書かれていました。
呉一郎は、従妹にして許嫁の呉モヨ子を殺したという事件を起こしており、本作は、この記憶喪失の主人公が果たして呉一郎なのかどうかを探る話となっています。
記憶を探る手がかりとして、主人公は、正木教授の集めた資料を読み漁っていくのですが、教授の残した資料には、脳髄や胎児の記憶や、前世の記憶について書かれたことばかりで、なかなか真相にたどり着くことができず、物語がループしているような場面もあり、結局、物語は混沌のまま終わってしまいます。
ドグラ・マグラの中で、脳というのは体の細胞に込められた記憶を集積して、映写機のように映し出すものという解説があり、脳の見せているものが現実とは限らない、もしくは、細胞に込められた何か、あるいは祖先、もしくは前世の記憶を見せていると解説しています。
文ストで、ドグラ・マグラが精神操作の異能となったのは、本作の人を幻惑するような作風と、主人公の見えているものが現実なのか、それとも脳が見せている幻なのか、わからなくなってしまうような物語展開が由来となっていると思われます。
本作を現代の作品に例えると、フィリップ・K・ディックやマトリックス、攻殻機動隊などのように、現実とは何か、脳とは何かを問いかけるようなサイバーパンク的な作品ともいえます。
つまり、ドグラ・マグラとは大正時代のマトリックスというべき作品なのです。
また、ドグラ・マグラを理解するために、以下の作品を読むことをお薦めします。
- ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
前作から14年後を舞台にしており、主人公のシンジが突如目が覚める場面や、周囲の人から、自身のことや、母親のこと、自分が身に覚えのない事件を引き起こしたと聞かされる場面は、どことなく、ドグラ・マグラで主人公が若林教授や正木教授から、呉一郎に関することを聞かされている場面を彷彿させます。
また、テレビ放映版のエヴァンゲリオンも胎児、母体、精神、記憶などテーマにしている作品であるため、ドグラ・マグラと類似している箇所の多い作品です。
監督の庵野秀明は、エヴァとドグラ・マグラの関連性に関して語ってはいませんが、監督の奥さんは安野モヨ子であり、前述したように彼女のペンネームはドグラ・マグラの登場人物が元になっています。
- SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)
主人公である響裕太が記憶を失っていると言う点や、彼がコンピューターに映っているグリッドマンと一体となっているという設定は、ドグラ・マグラで主人公と資料に書かれている呉一郎が同一人物(かもしれない)という設定と類似しています。
また、見えているものが、現実なのかどうなのかわからないという不可思議な世界観は、ドグラ・マグラに通じるものがあります。
- 火の鳥(復活編)
舞台は25世紀の未来。外科手術で脳の半分を機械に代用することで生きながらえた主人公の青年は、生物が無機物に見えて、ロボットが人間に見えるという現象に悩まされます。
やがて、主人公は、自分を殺しかけたのは何者で、なぜ殺そうとしたのかを突き止めようとします。
脳が見せるものは果たして真実なのか、記憶とは細胞にも宿っているのではないのかという点が、ドグラ・マグラと類似しています。
【文豪ストレイドッグス】夢野久作のまとめ
いかがでしょうか、文ストの夢野久作も、元になったドグラ・マグラも、人を幻惑する不思議な魅力を持っています。
文ストをご覧になられた方は、ぜひ、小説のドグラ・マグラも一読してください。読むと気が狂うと言われてますが、安心してください、本作を読んだ筆者は正常です。
……本当に正常です。