かつては敵、でも今は… 敦とモンゴメリー

 

敦に好意を寄せているもう一人の女の子が、ルーシー・モンゴメリーです。

敦同様、孤児院育ちなのですが、敦が懸賞金をかけられるほど強力な異能を持っていることで、周囲から、ちやほやされていると思いこみ、彼を妬んでいました。

しかし、敦本人から、自分と同じ苦しみを味わって生きていたと聞かされると、組合を裏切って敦に協力するようになります。

その後、モンゴメリーは、探偵社と同じビルにある喫茶店で働くようになり、時折、探偵社に協力するようになります。

モンゴメリーの敦に対する感情は、共感から愛情に変化していくのですが、本人の性格のせいか、まったく素直になることができません。

【文豪ストレイドッグス】実際の文豪、中島敦とは?

中島敦とは?

 

上は2020年に高志の国文学館で開催した「生誕110年 中島敦展」に寄せられた春河35の特別イラスト

 

中島敦とは、昭和初期に活躍した文豪です。

作家になる前は、本作の舞台である横浜で、女子高の教員を勤め、パラオ南洋庁で編修書記の仕事に就く傍ら、執筆活動に励みました。

日本に帰国した後、専業作家となりましたが、生来病弱であったため、三十三歳の若さで亡くなりました。

作風は、本作の異能の由来となった「山月記」や「李陵」のように、中国文学に影響を受けた作品が多いようですが、パラオ滞在時の経験を活かして、南国を舞台にした「南島譚」という作品なども執筆しています。

異能の元になった「山月記」とは?

本作の中島敦の異能の由来になった「山月記」とは、彼を代表する短編小説で、国語の教科書にも載るほど有名な作品です。

元になったのは中国の伝記文学「人虎伝」で、一人の男が虎になってしまった経緯を語る物語となっています。

主人公である李徴(りちょう)は、大変な秀才で、難しい試験を突破して官僚となったのですが、もともと高慢な性格であるのと、詩を好んでいたために、俗悪な官僚であることをやめ、詩人となる決意をするのですが、うまくいかず、いつしか発狂して山に籠り、獣を食い漁るうちに虎になってしまったのです。

やがて、虎になった李徴は、ある日、親友であった袁傪(えんさん)と再会し、自分が虎となってしまった経緯を語り、自身の家族を彼に託して、立ち去ってしまうのです。

原型となった「人虎伝」では、山月記とは違い、女性に襲い掛かる描写があるのですが、本作でも、敦が夢野久作の異能によって暴走してしまい、春野綺羅子や谷崎ナオミに襲い掛かる場面があり、人虎伝との関連性がうかがえる描写があります。

(こちらのサイトも参照

本編でも引用された中島敦の小説の一節とは?

文豪ストレイドッグスでは、山月記の他にも、もう一つ、中島敦の作品が関わっています。

それは「光と風と夢」という小説で、敦はこの小説の一節を二回引用しています。

一回目は、三社戦争の際、組合によって白鯨(モビーディック)に囚われていた敦は、横浜焼却作戦を知ると、脱出しようとし、止めようとしたモンゴメリーを説き伏せるために言いました。

 昔、私は、自分のしたことに就いて後悔をしたことがなかった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた。

 

そして二回目は、同じく三社戦争で太宰に言った言葉です。

太宰と合流することに成功し、横浜焼却作戦を阻止することに成功した敦は、太宰にポートマフィアとの同盟を結ぶアイディアを伝える際、太宰にこの言葉を言うのです。

頭は間違うことがあっても、血は間違わない。

 

この二つの言葉の元となった「光と風と夢」とは、ロバート・スティーブンソンという男の晩年の生活を語っている小説です。

実は、このロバート・スティーブンソンとは実在する小説家で、「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」などを書いた作家です。

前者の言葉は、小説の中にある日記に書かれたもので、後者は小説家になろうと決意した十五歳の頃を振り返った際に出てくる言葉です。

敦自身は、孤児院にあったこの本を、以前読んだことがあって、とっさに思い出したのですが、敦は本の作者の名前を忘れてしまっているようです。

問題は作者である中島敦は、文ストの世界だと作家ではありません。

では、敦の読んだ本の正体は何なのでしょうか?これには二つの考え方ができます。

一つは、メタフィクション的な演出として本を出したということです。

メタフィクションとは、虚構の世界の住人が、自分たちを虚構の存在として認識する表現手法で、映画「デッドプール」などで用いられています(物語のキャラクターが読者に語りかけたり、「これは○○漫画なんだぞ」と言ったりすること)。

もう一つは、文ストの世界では、本を書いたのが中島敦ではなく、スティーブンソンになっているということです。

つまり、文ストの世界では、スティーブンソンが作家として存在している可能性があるということです。

【文豪ストレイドッグス】中島敦のまとめ

中島敦の異能や出自はまだまだ謎に包まれており、彼が読んだ本や孤児院の院長との関連性も含めて、これからも物語に目が離せません。

最後に一つ、文ストの原作には秘密があり、本の表紙をめくると、ちょっとした漫画が描かれています。中島敦の髪や服装に関する情報は、そちらに載っているので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。

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