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中島敦は、文豪ストレイドッグスの主人公です。
普段はおとなしい少年ですが、虎に変身する能力をもっており、優れた力を秘めています。
また、彼は物語の重要な鍵を握っているようです。今回は中島敦の異能や正体について考察していきます。
【文豪ストレイドッグス】中島敦とは?
中島敦のプロフィール

- 年齢:18歳
- 誕生日:5月5日
- 身長:170cm
- 体重:55㎏
- 血液型:AB型
- 好きなもの:茶漬け、猫、カメレオン、横浜
- 嫌いなもの:自分、昔いた孤児院
髪の色は銀色で、目の色は分かりづらいですが金色です。衣装などを含めて、彼の外観は、白虎を意識したデザインとなっています。
好物は茶漬けで、第一話では国木田に奢ってもらっていました。
異能は虎に変身する「月下獣」です。
中島敦の性格

敦の性格は、おとなしく繊細で、困っている人をみると、ほっとけないお人よしです。
一方で、小心な一面もあり、困難な状況下だと逃げ腰になってしまいます。
彼のまっすぐで純朴な人間性は、ときに敵の心すら揺り動かしていきます。
その反面、孤児院時代に、院長から虐待まがいの躾を受けていたことがトラウマとなっており、時折、過去に院長から受けた罵倒の言葉が、フラッシュバックで思いだしてしまうことがあります。
あの独特な髪型と衣装は?
敦は、非常にバランスの悪い髪型をしていますが、これは孤児院時代に、下の子供達から切られてしまったのをそのままにしているのです。
また、衣装は探偵社に入社する前に、乱歩の発案で、探偵社のメンバーからそれぞれこしらえてもらったものです(DVD3巻の表紙より)。

- ベルト
太宰が提供。虎の尻尾をイメージしたのか、ベルトがやたら長く、太宰のいたずら心が見え隠れしています。
- 手袋
言い出しっぺの乱歩が提供しました。
- ワイシャツ
国木田が提供。そろえたものの中では一番無難なものです。
- ブーツ
谷崎兄妹が提供。選んだのはナオミの可能性があります。
- サスペンダー
宮沢賢治が提供。
- ネクタイ
与謝野晶子が提供。社長に会わせるために気をきかせた可能性があります。
- ズボン
福沢社長が提供。ニッカーボッカーズのような形状なのは、若年層はこういうズボンをはいていると福沢は思っているのでしょうか?
つけられているあだ名の数々
敦はマフィアからは人虎、フィッツジェラルドからはリカント、またはタイガービートルと呼ばれています。
リカントは本来「人狼」という意味ですが、フィッツジェラルド達は「獣人」という意味で使っているようです。
タイガービートルというのは、ハンミョウという昆虫の英語名で、「道教え」という別名もあるのです。
これは、敦がギルドたちが求める「本」の存在に関係があるためと思われます(「異能には秘密がある」の項を参照)。
また、敦の気弱な性格から、探偵社・西のへたれというあだ名もあります(東のへたれは谷崎)。
【文豪ストレイドッグス】中島敦と探偵社
太宰治との関係

敦にとって、太宰は師であるとともに命の恩人でもあります。
二人が出会ったのは、敦が孤児院を追い出されて放浪していた時、入水自殺をしかかっていた太宰を見つけて、彼を助けたのです。
その時、太宰は、街を荒らしまわっている虎の調査をしていたのですが、正体が無自覚に変身していた敦であると知ると、太宰は彼を探偵社に加えようとしたのです。
それ以来、太宰は敦の師となりますが、同時に、敦は、太宰のちゃらんぽらんな言動に振り回されることになります。
国木田独歩との関係

国木田は、太宰の次に敦と出会った探偵社のメンバーです。
初登場時、国木田はパートナーである太宰とともに、虎の捜査をしている最中に敦と出会ったのです。その際、国木田は空腹だった敦に、お茶漬けを奢るはめになります(太宰が金を持っていないため)。
国木田は、当初、虎に変身した敦が、区の災害指定猛獣であったため、入社に反対していましたが、敦の入社が決定すると、彼の兄貴分として敦の面倒を見るようになります。
国木田は、普段敦に対して、厳格に接していますが、彼がピンチの時には必ず駆け付け、武術を教えるなど、敦のことを気にかけています。
そのため、敦にとって第二の師とも言うべき存在となっていきます。
その他のキャラクターとの関係

他の探偵社のメンバーの中で仲が良いのは、谷崎潤一郎で、年齢も同じということもあり、よく行動を共にすることがあります。
江戸川乱歩や与謝野晶子の年長者組からは、弟分として扱われています。
宮沢賢治とは、一度彼の仕事を手伝ったことがあるのですが、彼の強引すぎるやり方に引いてしまい、以降は彼と一緒に仕事をすることがないようです。
【文豪ストレイドッグス】中島敦の異能や強さは?
異能「月下獣」とは?
敦の異能「月下獣」とは、巨大な白い虎に変身する能力です。
ただし、敦本人は、自分の異能を制御することができないため、変身すると意識がなくなってしまい、当初は、自分が異能者であることを知らなかったようです。
又、第一話の時、敦は、孤児院を追い出されて、無一文でさまよっていたため、虎に変身すると作物を荒らすようになってしまったので、区から災害指定獣として追われるはめになったのです(虎は肉食動物ですが、変身した敦を反映しているためか、作物を食べるようです)。
技名「月下獣 半人半虎」その強さは?

「月下獣 半人半虎」とは、福沢社長の異能「人上人不造」によって、異能を制御できるようになった状態です。
完全な虎になるのではなく、獣人形態になることによって、虎の俊敏な動きとパワーを自分の意思でコントロールすることができるので、異能を戦術的に使うことができます。
主な攻撃パターンは爪による斬撃ですが、尻尾を使って、敵をからめとることができます。
又、爪には、異能そのものを切り裂く力を持っています。
治癒力も高く、大けがを負っても、与謝野晶子の異能を使わずに治すことができます。
- 類似能力者
- 虎に変身する
「幻魔大戦」のドクター・タイガーマン。
- 野獣のような動きと驚異的な回復力
「X-MEN」のウルヴァリン。
- 異能を切り裂く爪
「ARMS」のジャバウォック
異能には秘密がある?虎の正体について考察

当初、敦は七十億の懸賞金がかけられて、マフィアから命を狙われてしまいます。
懸賞金をかけたのは、北米の異能組織「組合(ギルド)」、ロシアの地下組織「死の家の鼠」、欧州の異能組織「時計塔の従騎士」の三組織でした。
なぜ彼らが、敦にこれほどの執着をみせているのか、はっきりとしたことは分かりませんが、本来、彼らが狙っているのは、とある異能者が作り出したと言われている、白紙の「本」です。
この本には、不思議な力があり、整合性のある文章で書けば、現実を思うように改変させることができるのです。
フィッツジェラルドは、敦のことを「タイガービートル(道教え)」と呼んでいたことから、敦は、この「本」に何かしらの関係があるようですが、敦自身はまったく身に覚えがないようです。
あるいは、敦の異能はただの能力ではなく、本の力、もしくは本に関係した何かしらの力によって、発生した可能性があります。
孤児院の院長は何か知っていた?
敦が育った孤児院の院長は、大変冷酷な人物だったようで、敦を躾と称して、たびたび虐待していたようです。
しかし、院長が敦を厳しくしていたのは、敦が虎に変身して暴れてしまうために、閉じ込めたり、拘束していたのです。
つまり、院長は敦が異能を持っていることを知っていたのです。
問題は、院長は、敦の異能を周囲に隠していたということです。
敦の異能はかなり強力なので、特務課に相談して。国に任せるのが一番いいはずなのですが、なぜか院長はそれもやらなかったようです。
また、院長は、敦がいずれ苦難の道を行くことを想定していたのか、虐待まがいの躾をして、苦痛に耐える術を学ばせていたようです。
もしかすると、院長は、敦の異能が本に関わっているということに気づいていた可能性があります。
また、第一話で、敦を孤児院から追い出したのは、何者かに、敦の存在を嗅ぎつけられたためではないのでしょうか(フィッツジェラルドは、敦の経歴を調べていた)。
【文豪ストレイドッグス】芥川と中島敦の関係
同じ師を持つライバル

敦のライバルである芥川は、ぶっきらぼうで威圧的な雰囲気であるため、一見すると、敦とは真逆の男に見えます。
しかし、芥川の心の奥底には、敦のように他者の痛みを理解する心があり、一方、敦の心の奥底には、孤児院時代に受けた虐待によって、芥川のような闇を宿しています。
つまり、二人は、正反対であるがゆえに意識してしまうのであり、心理学用語で言うところの「シャドウ(抑圧されている自分の内面で)」の関係に当たると思われます。
つまり、敦と芥川は、お互いに自分が抑圧している内面を相手に見ているのです。
また、二人は太宰を師としているので、余計に意識せざるを得ないのかもしれません。
合体技で応戦!!いがみ合いながらも良きコンビ

少年漫画の醍醐味といえば、ライバルとの共闘ですが、敦と芥川も、時折共闘することがあります。
まったくそりが合わないように見える敦と芥川ですが、戦いの際は、敦が前衛、芥川が支援を分担し、驚くようなコンビネーションを見せます。
さらに、互いの異能を合体させると、とてつもない力を発揮するのです。
以下が二人の合体技です。
- 月下獣羅生門 虎叢(とらむらくも)
半人半虎となった敦に、芥川の技「叢(むらくも)」を合体させた技で、敦の膂力と巨大なかぎ爪のような形状になった羅生門によって、強力なパワーで敵をねじ伏せることができます(フィッツジェラルド戦で登場)。
- 月下獣羅生門 黒虎絶爪(こっこぜっそう)
虎の爪に、羅生門を合体させることで、より長く鋭い爪にすることができる。
敦の異能を切り裂く爪と、空間を切る羅生門の力によって、あらゆるものを切断することができます(イワン・ゴンチャロフ戦で登場)。
【文豪ストレイドッグス】中島敦の恋愛模様
文スト界のタイガー&バニー 敦と鏡花
恋愛にあまり縁のなさそうな敦ですが、二人の女の子から好意を寄せられています。
そのうちの一人が、泉鏡花です。

彼女は、ポートマフィアの暗殺者だったのですが、本来は優しい女の子であり、敦との出会いを得て、探偵社に入社することになります。
初めて敦が鏡花と出会ったとき、彼女は感情のようなものが無く、マフィアの操り人形となっていました。
しかし、敦の「望みがあるなら言葉にしなきゃだめだ」と言う言葉をきっかけに、人殺しをやめる決意をし、徐々に自分の感情を出すようになってゆきます。
探偵社に入社後は、太宰の粋な計らい(?)により、敦と同棲することになります。
二人は、時折コンビを組み、文スト界のタイガー&バニー(鏡花はウサギ好き)になるかと思いきや…二人合わせてようやく半人前というレベルです。
かつては敵、でも今は… 敦とモンゴメリー

敦に好意を寄せているもう一人の女の子が、ルーシー・モンゴメリーです。
敦同様、孤児院育ちなのですが、敦が懸賞金をかけられるほど強力な異能を持っていることで、周囲から、ちやほやされていると思いこみ、彼を妬んでいました。
しかし、敦本人から、自分と同じ苦しみを味わって生きていたと聞かされると、組合を裏切って敦に協力するようになります。
その後、モンゴメリーは、探偵社と同じビルにある喫茶店で働くようになり、時折、探偵社に協力するようになります。
モンゴメリーの敦に対する感情は、共感から愛情に変化していくのですが、本人の性格のせいか、まったく素直になることができません。
【文豪ストレイドッグス】実際の文豪、中島敦とは?
中島敦とは?

上は2020年に高志の国文学館で開催した「生誕110年 中島敦展」に寄せられた春河35の特別イラスト
中島敦とは、昭和初期に活躍した文豪です。
作家になる前は、本作の舞台である横浜で、女子高の教員を勤め、パラオ南洋庁で編修書記の仕事に就く傍ら、執筆活動に励みました。
日本に帰国した後、専業作家となりましたが、生来病弱であったため、三十三歳の若さで亡くなりました。
作風は、本作の異能の由来となった「山月記」や「李陵」のように、中国文学に影響を受けた作品が多いようですが、パラオ滞在時の経験を活かして、南国を舞台にした「南島譚」という作品なども執筆しています。
異能の元になった「山月記」とは?
本作の中島敦の異能の由来になった「山月記」とは、彼を代表する短編小説で、国語の教科書にも載るほど有名な作品です。
元になったのは中国の伝記文学「人虎伝」で、一人の男が虎になってしまった経緯を語る物語となっています。
主人公である李徴(りちょう)は、大変な秀才で、難しい試験を突破して官僚となったのですが、もともと高慢な性格であるのと、詩を好んでいたために、俗悪な官僚であることをやめ、詩人となる決意をするのですが、うまくいかず、いつしか発狂して山に籠り、獣を食い漁るうちに虎になってしまったのです。
やがて、虎になった李徴は、ある日、親友であった袁傪(えんさん)と再会し、自分が虎となってしまった経緯を語り、自身の家族を彼に託して、立ち去ってしまうのです。
原型となった「人虎伝」では、山月記とは違い、女性に襲い掛かる描写があるのですが、本作でも、敦が夢野久作の異能によって暴走してしまい、春野綺羅子や谷崎ナオミに襲い掛かる場面があり、人虎伝との関連性がうかがえる描写があります。
(こちらのサイトも参照)
本編でも引用された中島敦の小説の一節とは?
文豪ストレイドッグスでは、山月記の他にも、もう一つ、中島敦の作品が関わっています。
それは「光と風と夢」という小説で、敦はこの小説の一節を二回引用しています。
一回目は、三社戦争の際、組合によって白鯨(モビーディック)に囚われていた敦は、横浜焼却作戦を知ると、脱出しようとし、止めようとしたモンゴメリーを説き伏せるために言いました。
昔、私は、自分のしたことに就いて後悔をしたことがなかった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた。
そして二回目は、同じく三社戦争で太宰に言った言葉です。
太宰と合流することに成功し、横浜焼却作戦を阻止することに成功した敦は、太宰にポートマフィアとの同盟を結ぶアイディアを伝える際、太宰にこの言葉を言うのです。
頭は間違うことがあっても、血は間違わない。
この二つの言葉の元となった「光と風と夢」とは、ロバート・スティーブンソンという男の晩年の生活を語っている小説です。
実は、このロバート・スティーブンソンとは実在する小説家で、「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」などを書いた作家です。
前者の言葉は、小説の中にある日記に書かれたもので、後者は小説家になろうと決意した十五歳の頃を振り返った際に出てくる言葉です。
敦自身は、孤児院にあったこの本を、以前読んだことがあって、とっさに思い出したのですが、敦は本の作者の名前を忘れてしまっているようです。
問題は作者である中島敦は、文ストの世界だと作家ではありません。
では、敦の読んだ本の正体は何なのでしょうか?これには二つの考え方ができます。
一つは、メタフィクション的な演出として本を出したということです。
メタフィクションとは、虚構の世界の住人が、自分たちを虚構の存在として認識する表現手法で、映画「デッドプール」などで用いられています(物語のキャラクターが読者に語りかけたり、「これは○○漫画なんだぞ」と言ったりすること)。
もう一つは、文ストの世界では、本を書いたのが中島敦ではなく、スティーブンソンになっているということです。
つまり、文ストの世界では、スティーブンソンが作家として存在している可能性があるということです。
【文豪ストレイドッグス】中島敦のまとめ
中島敦の異能や出自はまだまだ謎に包まれており、彼が読んだ本や孤児院の院長との関連性も含めて、これからも物語に目が離せません。
最後に一つ、文ストの原作には秘密があり、本の表紙をめくると、ちょっとした漫画が描かれています。中島敦の髪や服装に関する情報は、そちらに載っているので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。