目次
「罪とは思考、罪とは呼吸」
第十巻 四十二話。
同じく、ドストエフスキーが世話係の少年に言った言葉です。
自分で手に入れた情報のみを盲信し、その結果、自滅してしまったAを世話係の少年が呆然とした表情で見ていると、ドストエフスキーは「人は実に簡単に「自分で考えている」と思い込みます」と語りかけました。
ドストエフスキーは、隙を見て時計を止め、呼び出し装置と部屋の鍵を壊して、自分の異能で作った仮想空間であるとAに錯覚させて、偽の異能を信じさせたのです。
ドストエフスキーは、人一人を死に追い詰めて、平然とした表情で「罪とは思考、罪とは罰」と言った後、「彼はそれから解放されたのです。」と言いました。
彼は死が救済であると思っているのです。
そして、船の中にいた人は、ドストエフスキーの手によって少年も含めて全員死亡してしまうのです。
「この世に幸を、子らに祝福を」
第十二巻 四十七話。
「共食い」エピソードの際にドストエフスキーがつぶやいたセリフです。
福沢と森に仕掛けられたウイルスを解除するべく、探偵社はウイルスを操るというドストエフスキーの配下を探し出そうとしました。
特務課の資料を頼りに乱歩が推理すると、異能者は横浜の貧民街に幼い兄妹たちとともに暮らしていたのです。
国木田と敦が駆け付けると、異能者と思われた男は逃げ、そして敦と国木田の前に幼い妹が手榴弾を身に着けて現れました。
彼女はドストエフスキーにそそのかされて、爆弾を使って兄を守ろうとしたのです。
国木田は敦に男を追わせて、自分は少女を説得しようとしましたが、少女は手榴弾のピンを引いてしまいます。
そのうえ敦が追い詰めた男は、異能者ではなく特務課の情報は、ドストエフスキーが流した偽の情報だったのです。
少女が死亡したのを察知したのか、ドストエフスキーは祈りを捧げるように、上記のセリフを言ったのです。
ドストエフスキーの冷酷さというよりは、死を救済と思い込む、彼独自の常軌を逸した人間性がうかがえるセリフです。
【文豪ストレイドッグス】実際の文豪、ドストエフスキーとは?
フョードル・ドストエフスキーとは?
ドストエフスキーは、19世紀のロシアを代表する文学界の巨匠です。
父親は医者にして、地主のアンドレ―ヴッチ。母親のマリアは商人の娘であり信仰心の厚い女性でした。
ドストエフスキーの小説に聖書の引用が多いのは、母親の影響であると言われています。
しかし、母が亡くなってしまうと、父親のアンドレ―ヴィッチは荒れてしまい、自身の土地にいる百姓たちに酷い仕打ちをするようになり、結果的に彼らから惨殺されてしまいます。
そして、この一件はドストエフスキーの心に暗い影を落とすようになります。
やがて、ドストエフスキーは「貧しき人々」で作家としてデビューを果たすようになり、「第二のゴーゴリ」とまで言われるようになります。
しかし、革命家ペトラシュフスキーのサークルに入ったために、政治犯として官警に逮捕されてしまい、シベリアに流刑されてしまいます。この時の体験を元に「死の家の記録」という小説を書くことになります。
「死の家の記録」は文ストのドストエフスキーの組織である「死の家の鼠」の由来になっています。
また、文ストでドストエフスキーがAとの戦いで、自分の異能を「自分の頭の中に、相手の意識を閉じ込めてしまう能力」と言ったのは「地下室の手記」という小説が元ネタになっています。
罪と罰とは?
「罪と罰」とは、世界的に有名な文芸書で、日本でも影響された人が多い作品です。
その正体は犯罪小説で、一人の男が金のために人を殺してしまったことから心の中にある良心や罪悪感に悩まされる話です。
貧しい元大学生のラスコーリニコフは、強欲な金貸しの老婆を殺して金を奪い取ってしまいますが、そこに現れた老婆の妹まで殺してしまいます。
ラスコーリニコフは現場から逃げおおせた後、世界の偉人を例に出して、非凡人は偉業を成すためなら、倫理を超えなければならないという理念を掲げて、殺しを正当化しようとしますが、心の中の罪悪感や良心を打ち消すことはできませんでした。
やがて、ラスコーリニコフより悲惨な毎日を送りながらも、まっすぐに生きようとしている娼婦のソーニャと知り合いになると、彼女の生き方に心を打たれ、自首をするようになります。
「罪と罰」が書かれる前、ドストエフスキーは政治犯として逮捕され、シベリアの留置所で過ごすことになるのですが、妻のマリアが病床に倒れてしまい、看病疲れからとうとう浮気してしまいます。
ところが、ドストエフスキーはギャンブルにはまってしまったために愛人にも見捨てられたうえ、本妻のマリアや兄が相次いで亡くなるという不幸に見舞われ、ドストエフスキーに残ったのは借金だけになってしまいます。
ドストエフスキーは、この悲惨な状況下で「罪と罰」を執筆していたのです。
主人公のラスコーリニコフの貧しい暮らしぶりは、当時のドストエフスキーの生活そのものだったのです。
また、本作は推理小説とみている人も多く、主人公が心の弱さから犯罪を起こしてしまう様は、ヒッチコックのサスペンス映画を見ているようにも思えます。
実際、翻訳を手掛けた江川卓は「罪と罰」を※倒叙(とうじょ)ミステリーのようであると言っています。
※(犯人の目線で語られる推理もの。例としては刑事コロンボ、古畑任三郎など)
漫画化もされていた!罪と罰の影響
「罪と罰」の影響は大変なもので、江戸川乱歩は本作を元にして「心理試験」という短編小説をを書いています。
漫画化もされており、漫画の神様である手塚治虫が初期のころに本作を漫画化していました。手塚はドストエフスキーの作品に影響を受けており、自分の長編物は「罪と罰」が元になっていると言っています。
その他には、柳沢きみお、岩下博美などが「罪と罰」を漫画化しましたが、一番意外なのはギャグ漫画家の漫☆画太郎です。
漫☆画太郎は、少年ジャンプで「珍遊記」という下ネタだらけの破天荒なギャグマンガを描いており、とても「罪と罰」読むような漫画家とは思えないのですが、ペンネームを「漫F画太郎」に改めて、本作を漫画化しています(ただし、主人公の名前がエビゾーに改造されている)。
【文豪ストレイドッグス】ドストエフスキーのまとめ
ロシア文学はとにかく難解で、文ストのドストエフスキーのキャラクターが謎めいているのは、ロシア文学のイメージからではないかとさえ思えます。
ドストエフスキーは「共食い」の事件の後、監獄に入れられてしまいますが、あの魔人が大人しくしているわけがありません。今後の彼の動向に目を離さないでください。