ネタバレ② 鳴瓢と花火師の問答

確保された被疑者はフリーの報道カメラマンでした。
そして現場から押収された犯人が撮影した写真、そこに写っていたのは爆破事件、ではなく、その事件現場を眺め、撮影する人々でした。
意図されたのか、それとも偶然なのか、花火師は鳴瓢と向かい合った部屋に収監されました。
花火師は事件現場を撮影する人間を、美しくも恐ろしいものに惹かれる人々を『空っぽ』と呼び、現代の人間の精神を写真に収めたと言います。
そんな人間の生死に価値など無いと花火師は断じますが、鳴瓢はその本性を見抜きます。
四年前の爆破テロを取材した花火師はその地獄に心を奪われ、同じ光景を味わうために何度も再現をしている。
花火師が撮影した『空っぽ』は他でもない花火師自身のものでした。
自己陶酔していた花火師は鳴瓢に本性を見透かされて動揺します。
そこに鳴瓢は追い打ちをかけます。
『お前の楽しみはもう終わったんだ。もう地獄は無いよ、お前の記憶以外に』
『もう、いいんじゃないか?』
精神的に追い詰められた花火師は、その夜に自ら首を締めて命を絶ちました。

 

その理論や行為の正しさはともかくとして、花火師は鳴瓢によって自殺にまで追い詰められました。
これは前回で語られた『鳴瓢は他人を何度も自殺に導こうとした』と直結するものです。
花火師の本性を見抜き、淡々と追い詰める鳴瓢は、事件と向き合う酒井戸とは全く別の人物のように見える恐ろしい顔をしていました。

ネタバレ③ 鳴瓢が見た夢

見たことのない建物の前に鳴瓢は立っていました。
見たことはない、しかし、それは自分が住んでいるマンションのはず。
なぜならここには妻がいる。
娘との会話。
『私は警察官、向いていると思う?』
こんな会話は無かった。
常に忙しい自分を見て娘は警官を目指すはずがなかった。
そして、自分も警官には向いていない。
家族すらも守れなかったのだから。
血に染まる部屋、そこに倒れる娘。
きれいな顔をした娘の亡骸、こんなきれいな顔じゃなかった。
全身の骨を折られ、多くの臓器を壊され、脳の半分を撒き散らされて死んだのだから。
連続殺人犯『タイマン』に満身創痍で戦わされ、長い苦痛を味わわされて殺されたのだから。
鳴瓢の夢はここで終わり、いつものベッドの上で目覚めました。

 

冒頭で鳴瓢が見た夢の内容です。
しかし、これは本当にただの夢でしょうか?
夢の内容は過去よりも少しだけ美化されたものでした。
父親に憧れる娘。
凶行に倒れるも、きれいな顔を保った娘。
これは鳴瓢が無意識に『凄惨な過去がせめて夢の中だけでも救いのあるものであってほしい』と願っていることが夢になっているのではないでしょうか。
そして、夢の中で鳴瓢は過去の自分を客観的に見ています。
まるでイドの中にいる酒井戸のように。
今回、名探偵になる資格として『イドが形成されること』が明かされました。
鳴瓢もイドが形成されたことを意味しますが、この夢とイドは無関係でしょうか?

アニメ「ID: INVADED イド:インヴェイデッド」第3話の感想

筆者感想

今回、花火師が語った人間の『空っぽ』について鳴瓢は花火師自身のことだと言いましたが、花火師に限った話ではないなと思います。
事件現場を撮影する人々、あろうことかSNSにまでアップする人、たびたび話題になっています。
つい先日も白昼で行われた首吊り自殺を多くの人々が撮影しており、物議をかもしていました。
こういった行為をする人々を非難するのは簡単ですが、その前に自分自身を振り返ることこそが重要だと今回の話で気付きました。
花火師が人々を『空っぽ』と呼びながら自分自身が『空っぽ』だったことに気付かなかったように、他人を非難する自分自身も同じ穴に陥っているのではないかと。

説教臭い話は終わりにするとして、今回は話としては面白かったけど映像的には今ひとつ、といったところです。
徐々に明らかになる鳴瓢の過去や、イドという特殊な空間で行われた犯行の謎を推理する点では興味を惹かれるのですが、腕を伸ばして異空間を動き回った前回と比べると今回はおとなしい映像になってしまったという印象です。
次回はより派手なイドの映像を見れることを期待しています。
あ、でも突飛なイドということはそれだけおかしな価値観を持った連続殺人犯が出てくるということなので、それはそれで怖い。ジレンマですね。

本堂町
出典:ID: INVADED イド:インヴェイデッド|The Official Site for Animation

あらすじやネタバレの中で触れることはできませんでしたが、前回決死の行動で事件解決の糸口を作ってくれた本堂町は無事一命をとりとめました。
安心しました。

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